不利益変更の多い就業規則見直しは、社労士倫理では問題なしか

【月刊社労士平成26年8月号には、社会保険料の節約(節減、削減)の問題が掲載されています。】

就業規則の見直しについての社会保険労務士のホームページを見てみると、「会社を守る」「ここが勘所」「トラブル予防の」などと魅力的な言葉が掲載されています。

しかし、今の労働条件よりも厳しくするのは「就業規則の不利益変更」「労働条件の不利益変更」に該当するのではないだろうかと思っています。
(ここでは、あえて不利益変更の意味については、コメントしません。)

労働契約法では、労働契約の内容の変更について、次のように規定されています。

(労働契約の内容の変更)
第八条  労働者及び使用者は、その合意により、労働契約の内容である労働条件を変更することができる。
(就業規則による労働契約の内容の変更)
第九条  使用者は、労働者と合意することなく、就業規則を変更することにより、労働者の不利益に労働契約の内容である労働条件を変更することはできない。ただし、次条の場合は、この限りでない。
第十条  使用者が就業規則の変更により労働条件を変更する場合において、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ、就業規則の変更が、労働者の受ける不利益の程度、労働条件の変更の必要性、変更後の就業規則の内容の相当性、労働組合等との交渉の状況その他の就業規則の変更に係る事情に照らして合理的なものであるときは、労働契約の内容である労働条件は、当該変更後の就業規則に定めるところによるものとする。ただし、労働契約において、労働者及び使用者が就業規則の変更によっては変更されない労働条件として合意していた部分については、第十二条に該当する場合を除き、この限りでない。

労働条件は、従業員(労働者)と合意すれば、変更できます。が、社会保険労務士のホームページで、「会社側にとって都合の良いような見直し」が不利益変更に当たる、従業員に説明・合意を必要とすると記載されているものは、非常に少ないように感じます。

無茶な、就業規則による労働条件の変更は、労働契約法違反ですから、法律違反ですよね。

私の場合は、新旧対照表を作る、従業員説明会をする、改正の要約を作る、などして従業員さんの合意をいただけるように業務遂行しています。

翻って、「社会保険料の節約・削減」月刊社労士8月号に記事として出ていました。
が、社会保険各法を守り、従業員にも合意を得るよう説明している、補填措置を講じている、などの場合までも問題があるとは、個人的には思いません。コンプライアンス的にも倫理上も問題ないでしょう。
それを、いかにも問題があるかのように記事化するのは、アイディアを否定し、営業活動を萎縮させるものです。
それを書くなら「就業規則の見直し」は、法改正に伴うもの以外は、コンプライアンスの問題があることを記事化して欲しいくらいです。

「社会保険料の節約(節減、削減)」それ自体が悪いような風潮になりつつある状況を作り出そうとしているような気がします。

法違反を問題にするなら、まず「労働条件の不利益変更」「就業規則の不利益変更」を問題視してはどうでしょうか。
「未熟」「ノウハウがない」のは、就業規則の方が深刻ですよ、実感として。
社会保険労務士会や連合会のお偉いさん方。



本業は、社会保険労務士です。
お客様である企業の経営者や人事労務担当者からの、社会保険料の削減についてアドバイスに乗っています。
大阪社労士事務所
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