受託できない業務
開業社会保険労務士として登録してもすぐには受託できない業務があります。
それが、「特定社会保険労務士」しか扱えない部分、すなわち個別労働紛争のあっせん代理、それらの相談です。
開業してすぐだと、「来る依頼は拒まず、何でもします」が基本姿勢の方も多いでしょうが、「個別労働紛争のあっせん」の部分は、いわゆる特定社会保険労務士(付記を受けた社会保険労務士)しかできないのです。
開業社会保険労務士となる前に、勤務等で登録して特別研修を受講して特定社会保険労務士になった方は、もちろん「すぐには受託できない」ことはありません。
昔は手続きも相談もできたのですが、特定社労士制度ができて、他の事項とバーターで、この部分は付記のない、無印の普通の社会保険労務士には扱えないようになってしまったのです。
特別研修や特定社労士向けの研修会では講義されていますが、社会保険労務士会では、表面上このことに触れることなく、本来知っておくべき対象者は、「特定でない社会保険労務士」の方です。多くは、開業して1年経たない方だと思います。
行政機関の「あっせん」に関するご相談、手続きの依頼があったときは、十分に注意して行いましょう。
開業当初で、特定付記がないときは、法令違反になるかも知れませんよ。
根拠となる法令
社会保険労務士法
(社会保険労務士の業務)
第二条 社会保険労務士は、次の各号に掲げる事務を行うことを業とする。
一から一の三まで (省略)
一の四 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成十三年法律第百十二号)第六条第一項の紛争調整委員会における同法第五条第一項のあつせんの手続並びに雇用の分野における男女の均等な機会及び待遇の確保等に関する法律(昭和四十七年法律第百十三号)第十八条第一項及び短時間労働者の雇用管理の改善等に関する法律(平成五年法律第七十六号)第二十二条第一項の調停の手続について、紛争の当事者を代理すること。
一の五 地方自治法(昭和二十二年法律第六十七号)第百八十条の二の規定に基づく都道府県知事の委任を受けて都道府県労働委員会が行う個別労働関係紛争(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律第一条に規定する個別労働関係紛争(労働関係調整法(昭和二十一年法律第二十五号)第六条に規定する労働争議に当たる紛争及び特定独立行政法人等の労働関係に関する法律(昭和二十三年法律第二百五十七号)第二十六条第一項に規定する紛争並びに労働者の募集及び採用に関する事項についての紛争を除く。)をいう。以下単に「個別労働関係紛争」という。)に関するあつせんの手続について、紛争の当事者を代理すること。
一の六 個別労働関係紛争(紛争の目的の価額が民事訴訟法(平成八年法律第百九号)第三百六十八条第一項に定める額を超える場合には、弁護士が同一の依頼者から受任しているものに限る。)に関する民間紛争解決手続(裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成十六年法律第百五十一号)第二条第一号に規定する民間紛争解決手続をいう。以下この条において同じ。)であつて、個別労働関係紛争の民間紛争解決手続の業務を公正かつ適確に行うことができると認められる団体として厚生労働大臣が指定するものが行うものについて、紛争の当事者を代理すること。
二から三まで (省略)
2 前項第一号の四から第一号の六までに掲げる業務(以下「紛争解決手続代理業務」という。)は、紛争解決手続代理業務試験に合格し、かつ、第十四条の十一の三第一項の規定による付記を受けた社会保険労務士(以下「特定社会保険労務士」という。)に限り、行うことができる。
3 紛争解決手続代理業務には、次に掲げる事務が含まれる。
一 第一項第一号の四のあつせんの手続及び調停の手続、同項第一号の五のあつせんの手続並びに同項第一号の六の厚生労働大臣が指定する団体が行う民間紛争解決手続(以下この項において「紛争解決手続」という。)について相談に応ずること。
二 紛争解決手続の開始から終了に至るまでの間に和解の交渉を行うこと。
三 紛争解決手続により成立した和解における合意を内容とする契約を締結すること。
4 (省略)
第2条第第1項一号の四から第一号の六までの業務が「個別労働関係紛争」の手続きや代理の部分、第2項が「特定社会保険労務士しかできない」旨、第3項に「紛争解決手続業務」に「相談」が含まれることが規定されています。
(青いラインマーカー部分は、桑野が引きました。)
あっせんに「参加する」「参加する利益がない」とお客様に答えるのも、相談だと思います。
2009-11-19 (木) 16:08:31更新
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