改正社会保険労務士法が成立、平成26年11月

【改正社会保険労務士法が、成立しました。】

社会保険労務士の業域が拡大するのは、大変喜ばしいことです。
これから開業する方たちにとっても、刺激になるでしょう。

ただし、個人的には(1)事務所の設置要件、(2)研修のポイント制、(3)天下りの廃止、を前提として欲しい。何かを言われると言うことは、何か不足している部分としては、こんな感じでしょうか。

(1)事務所の設置要件がありません。そのため、本来住居用でしかない公営住宅に事務所を設置する、マンション管理組合の許可を得ずに事務所を設置するなど、コンプライアンス・ルール無視が横行しています。

(2)弁護士・税理士・司法書士などの他士業から言われますが「社会保険労務士は勉強しない人が多いね」と。確かに、大阪会の必須研修でさえ受講しない人が多い。合格して勢いだけで業務をやっているのかな。

(3)コメントしませんが。

もう一つあるとすれば、体系だったカリキュラムに基づく研修制度(修習制度)でしょうか。開業を考えている者に対しては、開業前でも開業後でも6か月程度、週1回3時間計24回72時間程度で構わないので、やってほしい。営業・顧客開拓に関しては連合会がする必要は無いが、それ以外は、事務指定講習を発展させた形で、かつ実務に即した内容で研修をできるのでは?多くが企業との顧問契約を結んで活動するのだから、ベースは想定しやすい。プラス障害年金などのオプションなんてのは。
今の社会保険労務士は、人によって事務処理・手続代行も、労務相談のレベルも全くバラバラですから。
(社労士開業予備校の否定ではありません。営業・顧客開拓は講義できないでしょうし。)

連合会の記事から

 社会保険労務士の業務範囲拡大と社会保険労務士法人制度の改善を盛り込んだ社会保険労務士法の一部を改正する法律案が、平成26年11月14日の衆議院本会議で可決、成立した。
 今般の社会保険労務士法改正は、最近における社会保険労務士制度を取り巻く状況の変化に鑑み、(1)厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を引き上げ、(2)社会保険労務士が裁判所において補佐人となる制度を創設し、及び(3)社員が一人の社会保険労務士法人を設立することができることを実現するもの。
 法案は第186回通常国会において、6月18日の衆議院厚生労働委員会、19日の衆議院本会議において全会一致で可決されたが、参議院において次回国会への継続審議とされた。第187回臨時国会においては、11月11日に参議院厚生労働委員会、12日の参議院本会議において全会一致で可決された。14日には、再度、衆議院厚生労働委員会において全会一致で可決、同日午後の衆議院本会議に緊急上程され全会一致で可決、成立に至った。

改正社会保険労務士法の主な内容

第1 個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続における紛争の目的の価額の上限の引上げ
厚生労働大臣が指定する団体が行う個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続において、特定社会保険労務士が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的の価額の上限を、120 万円(※現行は少額訴訟の上限額(60万円))に引き上げること。(第2条第1項関係)

第2 補佐人制度の創設
1 社会保険労務士は、事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について、裁判所において、補佐人として、弁護士である訴訟代理人とともに出頭し、陳述をすることができることとすること。(第2条の2関係)
2 社会保険労務士法人が1の事務の委託を受けることができることについて規定すること。(第25条の9の2関係)

第3 社員が一人の社会保険労務士法人
社員が一人の社会保険労務士法人の設立等を可能とすること。(第25条の6等関係)

同じタイミングで、連合(日本労働組合総連合会)からもコメントが出ています。一部引用。問題があればご指摘ください。

2014年11月18日
社会保険労務士法改正法案の成立に関する談話

日本労働組合総連合会
事務局長 神津 里季生
 11月14日、社会保険労務士法(以下「社労士法」)改正法案が可決、成立した。労働組合活動の現場から、社会保険労務士(以下「社労士」)が団体交渉等に不当に介入することで正常な労使関係を損なう事態が生じているとの声があがる中、社労士の業容拡大のみを認める同法案が成立に至ったことは問題である。また、同法案は、労働者の権利保護に大きく影響をおよぼしかねないにもかかわらず、労働政策審議会での議を経ることなく、議員立法として法案提出、成立したことは極めて遺憾である。

 改正法案は、[1]個別労働関係紛争に関する民間紛争解決手続きにおいて、特定社労士(社労士のうち、一定の研修を受けた上で紛争解決手続代理業務試験に合格した者)が単独で紛争の当事者を代理することができる紛争の目的価額の上限の引き上げ(60万円→120万円)、[2]労働関係事項について、全ての社労士が補佐人として訴訟代理人とともに出廷し、陳述することができる制度を創設することを主な内容とするものである。社労士法第1条が規定する「労働及び社会保険に関する法令の円滑な実施に寄与するとともに、事業の健全な発達と労働者等の福祉の向上に資する」という社労士の業務目的に逸脱するような事案が見受けられる中、労働関係事項における業容拡大は認められるべきではない。また、社労士の試験科目には個別労働紛争に関する科目が設けられておらず、対審構造に基づく訓練も行われていない中、特定社労士のみならず全ての社労士まで労働関係事項に関する補佐人業務を認めることは極めて問題である。