あけましておめでとうございます+単純な疑問

【社労士開業予備校は、物事をまじめに考えています。】

あけましておめでとうございます。
今年2019年に開業している方にとっては、スケジュール管理が大事な年、今年社会保険労務士試験の受験を考えている方にとっては「あと◯◯日」と数えることのできる年ですね。

亥年は、私桑野の亡き父の干支でもあります。

今年も、エッセンスコースをはじめとする社労士開業予備校講座、合同事務所、SR-CLUB勉強会などを前に進めていきます。

社労士開業予備校・2019年あけましておめでとうございます

さて、平成30年12月号の月刊社労士の定例記事「労働保険審査会裁決事例」について疑問を持ちました。なぜ、業務でそういうことが労災として認められるのか。

そんな単純な私の疑問に、ある勉強会のメンバーでもある弁護士の井上正人先生(大阪弁護士会所属)が優しく解説してくださいました。

開封・読書率の低い月刊社労士ですが、私の周りの社会保険労務士にも予断を与えずに「どう思う?」と訊いたところ、約4名ですが「理解しにくい」「労災に認定されるの?」という旨の返事が返ってきました。

さっそく井上先生の解説に続きます。ご本人からブログに掲載する旨の了解は得ております。

1 私見
 平成30年12月の事例では、暴行と業務遂行性・業務起因性の関係について、民法の使用者責任の議論を拝借して労災の認定を判断したものと思われます。


2 使用者責任
(1)使用者責任とは、従業員が仕事上のミスで第三者に損害を与えてしまった場合、損害に対する直接的な加害者でない雇用主がその損害賠償責任を負う制度のことで、民法715条に規定されています。

(2)この使用者責任が認められる根拠は、雇用主が自分の業務のために従業員を用いることによって事業活動上の利益をあげている以上、雇用主は従業員による事業活動の危険も負担すべきであるという「報償責任の原理」にあるといわれています。

(3)労災は、事業主の従業員に対する責任であり、民法715条は、事業主の第三者に対する責任の問題であり適用場面は異なります。しかし、どちらも、従業員を用いることによって事業活動上の利益をあげている以上、雇用主は従業員による事業活動の危険も負担すべきであるという「報償責任の原理」を根拠としており、どこまで事業主に責任を負わせるべきか(労災認定するかどうかの判断基準)については、使用者責任の議論を拝借したものと思われます。


3 使用者責任と暴行
(1)従業員が暴行事件を起こした場合に雇用主が責任を負うかは、民法上は「事業の遂行について」(民法715条)という要件を満たすかが問題になります。最判は、「使用者の事業の遂行行為を契機とし、これと密接な関係を有すると認められる行為(暴行)によって加えられた損害は『事業の遂行について加えた損害』に当たる(最判昭和44年11月18日)とされています。

(2)つまり、従業員の暴行については事実的不法行為であるからといって責任を免れません。かとって、完全な私闘では責任を負わないということです。

(3)なお、平成30年12月の事例では、仮に民法715条で使用者責任が追及された場合には、使用者責任が認められる事案になると思います。

(4))従業員が暴行事件を起こした場合に雇用主が民法715条によって使用者責任を負うかはメジャーな論点です。「従業員 暴行 民法715条」でネット検索頂くとなるほど、と思って頂けると思います。

この返事をいただいて、もう一度、裁決事例の記事を読みました。が、「使用者責任」の単語さえ出てきてません。ホンマ、労働保険審査会はどういう意味での判断なのか。

事業主Yが、主導的立場で暴行を加えているように思えました。また、右ページ、右の段落後半で、「私的な怨恨感情」は無いようなことが書かれていましたが、やはり理解できない部分があります。
(事業主が加害者側かどうかは、労災認定に当たっては関係なく、被災者がどういう状態なのかで判断するのが正しいようです。業務起因性・業務遂行性を考えろ、です。)

どんな社会保険労務士さん、弁護士さんが、審査請求したのか。興味がわいてきます。調べていませんが…。

再度、井上先生から連絡をいただきました。

使用者責任の話を持ち出して、誤解を生みました。
私は、以下使用者責任における、従業員の暴行という論点の議論を参考に、私は以下のように裁決事例を読みました。


まず、裁決は、「他人の故意に基づく暴行による傷害の業務起因性の判断に関して業務に従事している場合において被った負傷については、当該故意が私的怨恨に基づくもの、自傷行為によるもの、その他明らかに業務に起因しないものを除き、業務に起因するものと推定する」との規範を定立して、事案に当てはめています。


規範定立、→ 事案へのあてはめ、→ 効果 という三段論法です。
規範の内容は行政内部で決まっているものであり、あてはめにも恣意的なところがなく、私見としては事務的に判断した事例であると理解していました。


私的な怨恨感情での傷害とは、例えば、寿司屋のアルバイトが配達中に、不倫相手の女性の夫から殴られたようなケースを考えているだと思います。業務中ではありますが、完全に業務と無関係な事情によって怪我をしていますので、業務起因性は認められないと思います。


例えば、 寿司屋のアルバイトが配達中に、交通事故に合えば業務起因性は認められます。過失ではありますが、不法行為による侵害です。
例えば、 寿司屋のアルバイトが配達中に、酔っ払いに絡まれて殴られても業務起因性は認められます。


今回の事案が、パワハラ上司が部下を怒りに任せて殴った事案であっても、「他人の故意に基づく暴行による傷害の業務起因性の判断に関して業務に従事している場合において被った負傷については、当該故意が私的怨恨に基づくもの、自傷行為によるもの、その他明らかに業務に起因しないものを除き、業務に起因するものと推定する」との規範を考えると、仕事上のいざこざが原因になっていれば、業務起因性は認められると思います。


今回は、上司ではなく、事業主が暴行を加えている事案ではありますが、上記の規範を使う以上は業務起因性は認められるものと理解しています。


桑野さんのご指摘が、仕事とは関係のない話(刑事事件)なのになぜ、業務起因性が認められるのかということであれば、規範に対する疑問ではないでしょうか。しかし、紛争を処理するのには、規範を立てなければなりません。そして、規範は誰かが決めないといけません。


そういうことで、規範を作った人がいて、それを機械的に適用したらこうなった、ということではないでしょうか。


先例(規範)の問題は、「使用者責任における、従業員の暴行」という論点を調べると面白いと思います。

もともとが業務に起因しているのであり、労災保険給付が認められてしかるべき…。

私プラス約4名の社会保険労務士は、「う~ん」となる記事だったんです。他の社会保険労務士さん達は、皆さんご理解されている記事内容だったのでしょうか。エラいんですね!

井上先生には、「そもそも、どこで桑野さんが悩んでいるのか疑問に思っているのか、それ自体が分からない」と…。法律的な考え方が根本的に欠けているんだと思います。

でも、良かった!
エッセンスコースの社会保険・労働保険の講師は、真面目な勉強好きの社会保険労務士先生です。私ではございません。

弁護士の井上正人先生、貴重なお時間を割いて、メールで返信くださってありがとうございました。本当に、スミマセン。


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エッセンスコースも、まだまだ受講申込み、間に合います。

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次回は、2月です。日程は決まっています。

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